やみつきジャパン!

若年性パーキンソン病と闘う札幌在住独身サラリーマンのショートショート小説公開ブログです。

俺が会社の床を磨く本当の理由

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 会社のみなさんは知っているかと思いますが、俺は定期的に社内の床を磨いています。俺が床を磨くようになったのには深い訳があります。いつもは時間がないためき誰に聞かれても「汚れが気になるから」と省略して話していますが、この場を借りて俺の考え方について話しておこうと思います。

 「どうしたの?」、「何こぼしたの?」、「何か悪いことしたの?」。床磨きを始めたばかりの頃、朝早くから床を磨いている俺を見て、みなさん驚かれていました。俺が大きな失態をしたと思ったそうです。社長の息子である俺が頭を下げて膝をつき床を磨く光景は、誰も想像していなかった光景でした。それは俺自身も同じです。入社したばかりの頃、俺は傲慢で態度がとてもデカい男でした。病気になって人の優しさに触れ、人を信じること、愛することを知ってからは、協調性のある態度のデカい男になりました。残念ながら態度のデカさは治っておりません。器は小さいのに、態度はデカいままです。これに関しては、お値段据え置きみたいなものだと諦めてください(笑)

 俺の会社は定期的な掃除を外部に委託しているため、ホコリはないのですが、床はやや黒いです。行き交う人の量が多い会社であるため仕方ないのですが、俺は「汚れ』が気になるので定期的に磨いています。俺が気になる『汚れ』とは、床の汚れだけではなく、その汚れを放置している社内の空気です。みなさんは、「またすぐに汚れるから」と言われますが、その考え方自体が『汚れ』だと思っています。根本にある『諦めの気持ち』、それこそが俺が気になる『汚れ』です。

 アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した『割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウ理論)』というものがあります。

 割れ窓理論とは次のような説である。
 治安が悪化するまでには次のような経過をたどる。

1.建物の窓が壊れているのを放置すると、それが「誰も当該地域に対し関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出す。

2.ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。

3.住民のモラルが低下して、地域の振興、安全確保に協力しなくなる。それがさらに環境を悪化させる。

4.凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。

 したがって、治安を回復させるには、

・一見無害であったり、軽微な秩序違反行為でも取り締まる(ごみはきちんと分類して捨てるなど)。

・警察職員による徒歩パトロールや交通違反の取り締まりを強化する。

・地域社会は警察職員に協力し、秩序の維持に努力する。

などを行えばよい。

割れ窓理論 - Wikipediaより引用)

  床が汚いままだと、自分のデスクの上やパソコンの中も気にしなくなります。仕事上で気になることがあっても、些細なことだと目を瞑るようになります。仕事の効率が悪くなったり、早めに解決すれば小さな問題だったこともいつもにか大きな問題になっていることもあります。

 「まっ、いいか。何とかなるよ。誰かが何とかしてくれる。」

 この考え方が会社を病気にするガンなのです。入社したばかりの俺も他の方と同じように考えていました。そして、いつも「何で誰もしないんだよ!」と心の中で怒っていました。しかし、ここに大きな間違いがあることに気がつきました。『誰』の中に『自分』が含まれていないことに。

 自分の仕事ではないからしない。手伝わない。社内の人間がみなこの考えで働いている会社は働きやすい会社でしょうか?もちろん、仕事の内容によっては手伝えないことはあります。しかし、直接手伝えなくても間接的に手伝うこと、サポートすることはできます。社内の掃除や残業者への差し入れ、上司から部下へのねぎらいの言葉などいくらでもやれることはあります。会社の規模が大きくなればなるほど、業務は細分化され、社内の中で全く話すこともない関係の人も出てきます。仕事の繋がりもなければ、雑談することもない。そんな人間関係に絆は生まれません。コミュニケーション不足によるミスも出てきます。そして、責任は互いに擦り付け合うようになります。こうなると社内の雰囲気は最悪です。会社としては末期です。そんな会社で働くことは楽しい訳がありません。給料をもらうために我慢するだけの場所となってしまいます。そんな会社の社員が床の汚れを気にする訳がありません。同僚のスケジュールなんか気にするわけもなく、自分のペースで仕事をし、お客様からのクレームも他の担当者が悪いと他人のせいにするでしょう。

 ここで一つ大きな間違いがあります。お客さんが取引先相手として認識しているのは担当者個人ではなく、会社という組織です。社員は常に会社の代表として対応しなくてはならないのです。社員は会社という組織の一員として、お互いを助け合うべきものなのです。ここで一つ問題になってくるのが、他人を気遣う優しい人だけが苦労を背負い込んでしまうことです。そのため、管理職である上司がそういう人を積極的にねぎらったり、評価してあげるべきです。そうすることで、まわりのモチベーションも上がるため、部内さらには社内全体の生産性も上がります。

 ただ、どこの会社も同じだと思いますが、モチベーション管理ができる職場環境の構築は難しいです。また、腰の重い上司もいます。頑張っている社員を昇格させれば、それを見た他の社員もやる気が起きて、生産性の向上が望めます。たった一人の社員の人件費を少し上げるだけで、複数の他の社員の生産性が上がるのであれば、経費としては安いものです。しかし、実際のところ、こんな簡単なこともできない会社が多いです。俺の会社もその辺はあまり上手くできているとは思えません。「なんであの人が昇格したの?」と毎年声が上がっているのが現状です。結果を出している人が出世するのでしたら、誰も文句を言いません。しかし、残念なことに俺の会社は年功序列の繰り上げ当選型の会社です。これでは、社内全体のモチベーションは下がってしまいます。そして、誰もが諦め始めます。

 今の俺には人事権はありません。「それでも何かできないか?家族のように大切な同僚たちの笑顔を守ることはできないか?」といつも考え、お菓子を配ったり、自虐ネタで笑いを取ったり、床掃除して社内を綺麗にするなど、居心地のいい環境を作るよう心がけています。このように書くと俺がいい人であるように聞こえますが、居心地のいい環境を作ることは、自分のためです。なんせ俺は身勝手な男で、器の小さい男ですからね。せいぜい俺が支えられるのは、自分の目につく範囲の人たちだけです。それでも、俺が支えた人が別の人を支え、支えられた人がまた別の人を支えと続けばいいと思っています。理想論ではありますが、俺はこの理想を叶えるため、床を磨いています。自分が働く環境は自分で作るという方針で、俺は動いています。

 いつか全社員から『諦め』という『汚れ』を落とせるその日まで、俺は床に這いつくばって磨き続けます。 

 

 そして、下記記事が今の俺の職場環境です。

tyoiwaru.hatenablog.com

 

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