やみつきジャパン!

若年性パーキンソン病と闘う札幌在住独身サラリーマンのショートショート小説公開ブログです。

奪われた俺の公園

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「この空き地に公園があったら、多くの子供たちが喜ぶだろうね」

 市長が缶コーヒーを飲みながら夢を語り出した。

  俺にも3歳の子供がいる。この空き地から歩いて5分。確かにここに公園があれば助かる。

「この空き地は市の所有なのですか?」

「もちろん市の土地さ。長らく資材置き場として使われていたが、最近やっと空き地になったんだ」

「公園にしないのですか?」

「予算がないからね」

「休日に市の職員みんなで少しずつ手入れしていくのはどうでしょうか? 家族も連れてきてアウトドアみたいに楽しみながら作るんです」

「それはいいね! 是非やってくれよ。君が音頭を取って」

「俺がですか? 市長からみんなに話を通してくれないのですか?」

「私が言ったら、命令になってしまうだろ? あくまで有志でなくては」

 

 俺は同じフロアの仲間たちに次々声をかけ、毎週日曜に十数人で空地を公園にする活動を始めた。最初はみんなアウトドアっぽいと楽しんでいたが、2月後には俺と2家族しか残っていなかった。最初の頃は、作業の後、みんなでバーベキューをやって、宴会でバカ騒ぎして盛り上がったのだが、最近は、2時間作業して持ってきたお弁当を食べて解散という流れに変わっていた。

「秋野さん。申し訳ないんだけど、来週からは参加しないことにしたから」

「ごめんね。うちも」

 ついに俺一人になってしまった。公園はまだ2割も完成していなかった。このペースだと当初予定した年内の完成が危うい。俺は休日だけでなく、平日も仕事の後、作業をすることにした。

 

 12月中旬。俺一人で公園を完成させた。簡単な序幕式を終え、子供たちが俺の作った手作りの公園で遊んでいる。子供たちの笑顔を見ると俺も感無量だ。

「お疲れ様。聞いたよ秋野君、これほとんど一人で作ったんだって?」

「ええ、まあ」

「君に頼んで正解だったよ」

 市長が俺の肩を叩いて俺を褒めてくれる。子供たちの笑顔も嬉しいが、仕事人間の俺にとって仕事で褒めらることは何よりも嬉しい!

「市長さん、公園を作ってくれて、ありがとうございます!」

 子供たちが俺の隣の市長を囲んでお礼の言葉を言った。

「これは、丁寧な挨拶をありがとうね。」

「市長さんも遊ぼうよ」

 市長が子供たちに連れられて公園に入って行った。

 子供たちに連れられて行く市長を見て、俺は胸の中がモヤモヤするのを感じた。

 

 一月後、役所の近くのラーメン屋で俺はラーメンを食べていた。

 「こちらが今話題の市長が一人で作ったという公園です」

 へぇー、俺以外にも一人で公園作ったやつがいたんだ。

「市長さん、この公園を作る上で大変だったところはどこですか?」

「そうですね。どれか一つを上げるのは難しいかな? ただ、子供たちの笑顔を思い浮かべて作業していたら、あっと言う間でしたよ」

 俺はテレビに目をやった。テレビに映っていた市長はうちの市長だった。市長が一人で作っただと? 一人で作ったのは俺だ!

 

「市長! テレビ見ました。あれはどういうことですか? 一人で作ったのは俺ですよ!」

「まあまあ落ち着いて。作ったのは君だが、指示したのは私なのだから、私が作ったと言ってもいいだろ?」

 

  翌日、俺は役所を辞めた。