やみつきジャパン!

若年性パーキンソン病と闘う札幌在住独身サラリーマンのショートショート小説公開ブログです。

彼女が生になるまで20年

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 俺の名はT。これかから話すことは、大学1年の夏休みの時の話だ。

 高校の同級生と久しぶりに集まることになった。全員遊ぶ金がなく、共通の趣味もなく、酒を飲むのも5人中2人だけだったため、どこで遊ぶかが問題になった。5人の中で幽霊が見えるのは俺とHだけだったのだが、そのHが俺とどちらがより霊能力が高いのか心霊スポットに行って勝負しようと言ってきた。Hは高校の時からやたらと俺をライバル視しており、卒業後もそれは変わらなかった。俺は気が進まなかったのだが、他の友達たちが乗り気だったため、待ち合わせして小樽の心霊スポットに行くことになり、車を持っている2人がそれぞれの車で近場に住む友達を拾い上げて向かうことになった。札幌から小樽に向かう途中で寄ったコンビニの駐車場でFが急に電話しだした。

「知り合いの女の子も行きたいと言っているけどいいか?」

 男5人で心霊スポット巡りする予定が、急遽、女の子が参加することになったのだ。リア充イベントの発生だ。俺たちは、もしかしたらの期待を胸に浮かれていた。待つこと1時間。1台の車が駐車場にやってきた。車から女の子が降りてきた。

「お待たせ!車ここに置いていくけどいいよね?私、小樽の道分かんないからさ」

「F、お前女友達3人もいるのかよ!」

「はぁ? お前の目、相変わらず腐っているな。どう見たって2人だぞ?」

 俺が遠目で見た時は、3人いたように見えたのだが、暗い駐車場だったため見間違えたらしい。それにしても、Fの野郎ムカつく!

「お前、モテなさ過ぎて、ついには女の幻覚見出したか?」

 昔からそうだったのだが、Fは俺のことが嫌いらしく、いつも俺を小馬鹿にしてくる。しかし、馬鹿にされても俺の成績は国立レベルで、Fは専門学校。俺はやりたいことがあったので国立を受験せず、私立に進学したが、馬鹿にされる覚えはない。

「いいよ。後で俺がここまで送るから。自己紹介は車の中でするから、俺の車に乗って」

 そう言うと、Fは自分の車に友達のIと女の子2人を乗せだした。結局、残された俺たちは男3人で車に乗って小樽に向かうことになる。道中、俺は助手席から運転しているHと女の子を持ち帰るかどうかの話で盛り上がっていた。

 車2台で小樽の心霊スポットである廃墟になった病院の近くについた。俺たち3人の自己紹介は結局、車を降りてからとなった。しかし、明るい街灯の下、女の子の顔をよく見ると、お世辞にも美人とは言えない顔で女友達がいると自慢していたFのことを全く羨ましく思えなくなった。目が腐っていたのはFの方だった。初めて会った時、駐車場は暗くて顔をよく見えなかったため、男3人で盛り上がっていたのだが、街灯の灯りで明らかになった女の子の顔を見た俺たち3人のテンションは急降下。Hは俺の高校で一番のイケメンで1年おきに彼女が変わるほどのモテモテだったため、Hはお持ち帰りする自信があったのだろうが、顔を見て持ち帰らないことを決めたらしい。分かりやすいほど、女の子たちへの態度が雑になっていた。

「でさ、さっき話したのが、モテモテのHと眼鏡のT」

 F、眼鏡って言うな。お前も眼鏡かけているだろ!それに俺の紹介が雑だぞ!

「マジ?この二人が幽霊見える人?」

「Hさん、マジで格好いい! こっちはどうでもいい。」

 女、俺のことをこっちはどうでもいいとか言うんじゃねぇ!

「Hさんは今、彼女います?」

 なんだ?この女たち、イケメン狙いかよ!どうせ俺はイケメンじゃないですよ!外見だけでなく、性格もブスかよ!人を見かけで判断するとか嫌な女だ。確かに俺はイケメンではないが、性格だけは良……くない。ダメだ。俺、いいとこなしだ!

「俺、今彼女いないけど、しばらくはいいかな。浪人生だし、勉強に集中したいから」

 Hめ、好みの女じゃないから逃げやがったな。お前、最近予備校サボって遊んでいると車の中で言っていたじゃないか!顔を見るまでやる気満々だったくせに!

「幽霊に関してはTの方が得意なんだぜ」

「ごめ~ん、その人興味な~い。私はHさんと一緒がいい!」

 結局、Hは女の子たちと一緒に探索することになる。病院内は暗く、FとHが持ってきた懐中電灯だけが頼りだった。女の子はキャーキャー言っていたが、そこには幽霊は全くいなかった。それよりも不法侵入になること自体が俺は怖かった。自然の場所や公園なら問題ないが、事前に病院だと知っていたら俺は猛反対していただろう。俺は嫌々だが、みんなと病院内をウロウロした。俺もHもここには幽霊はいないと意見が一致したため、次の心霊スポットである山の方に向かった。結局、そこもハズレで幽霊はいなかった。ただ、そこから離れた山の頂上付近から変な視線を感じたことを俺が話すと、女の子たちがまたキャーキャー騒いだ挙句、俺のことを幽霊が見えて気持ち悪いとハッキリ言いやがった。この時以来、俺は幽霊が見えることと予知夢を見ることができることは言わなくなった。

 帰りの車の組み合わせで、俺は女の子2組が乗った車に乗りたいと言ったが、ジャンケンで負けて、また男だけの車に乗ることになった。今度は助手席ではなく、後ろの席、助手席の真後ろに座ることになってしまった。俺たちは男3人でもう1台に乗っている女の子2人はどちらもブスだと話しで盛り上がっていた。

「ねえ、あなた私のこと見えているでしょ?」

 俺はまっすぐ前を見たまま、顔を一切動かさず、友達たちと話し続けた。

「最初会った時、女3人って言ったよね?見えているのでしょ?」

 右横の空いている席から女性の声が聞こえていたが無視し続けた。誰もいないはずの席を見るのが怖かったからだ。

「無視すんな! 聞こえているんだろ!」

 俺の顔と助手席の間に女が割り込んでくる。長い黒髪と青白い肌、血走った目を大きく見開いて、俺を睨みつけてくる。そして、つい目を合わせてしまった。

「やっぱり、見えているだろ! 無視すんじゃねーよ!」

「なあ、H。まっすぐ帰らず、ゲーセン寄ってかないか?」

「ええっ、T君、俺は明日仕事だから、まっすぐ帰りたいよ」

「悪いなZ、俺もゲーセンに寄りたいわ。少しだけだから付き合えよ」

「分かったよ」

「ああっ、できれば大きいゲーセンがいいな」

「分かった。少し遠回りになるけどいいよな?」

「おおっ、頼む」

 車の中から、前を走るFに電話し、別行動を取ることを話して俺たちはゲーセンに向かった。ゲーセンにつくと、Zがなんでまっすぐ帰らないのかと、また文句を言い始めたが、俺とHは黙ってZをゲーセンへ連れて行く。

「Z、お前は見えていないから気づかないだろうが、Tの隣にずうっと女の幽霊がいたんだよ」

「いつもTの後ろにいる背後霊の話でなくて?」

 俺の高校の同級生たちは、高校である事件が起きた時、俺の後ろに女の幽霊がいること知った。それでも、彼らは俺から離れることなく付き合い続けてくれている。本当にいい奴らだ。

「いや、後ろのこいつではない女の幽霊。札幌の駐車場からずうっとついてきていた」

「大丈夫なの?ヤバいんじゃない?」

「ああっ、それなら大丈夫。俺の後ろのこいつが、ここの駐車場に着いた時、食っちゃったみたいだから」

「あの女幽霊がお前に近づき過ぎたのが気に障ったのか?」

「どうかな? 俺も後ろのこいつが何考えているのか分からんからな」

「幽霊にモテて、背後霊に嫉妬されるなんて、流石だな」

「いや、全然嬉しくない。俺は幽霊じゃなく生身の女にモテたいよ」

「お前の後ろの女が消えない限り、お前、誰とも付き合えないんだろ?」

「かもな」

「それにしても、さっきいた幽霊には、T君の背後霊は見えなかったのかな?」

「俺もよく分からないが、こいつ俺のそばにいる時といない時があるみたいなんだよ」

「背後霊なのに?」

「たぶん、背後霊じゃないと思う」

「悪い幽霊ではないんでしょ?Hは見えているの?」

「後ろからTに抱き着いているわ。モテモテだな。中々いないぞ?一日中抱き着いてくれる女は」

「いや、こいつは女にカウントできんだろ?」

 そう言うと、急に心臓が苦しくなってきた。

「黙れ。殺すぞ」

 騒音が大きいゲーセン内でも、ハッキリと女の声がした。俺は後ろの背後霊もどきに脅されたのだ。

「まあ、そうだな。こいつは美人でかわいい女だけど、女というより俺の家族さ!」
 心臓の苦しさがなくなった。そして、後ろの気配が消えた。

「お前、さっき顔が青かったぞ。あいつのせいか?」

「いつものやつだ。たまに俺を脅してくるんだよ」

「お前さ、あいつが消えても女で苦労しそうだよな。幽霊が消えても、ストーカーとかの被害に遭いそうだよな」

「俺に限って、それはないだろ?ストーカーされるのは、美人だけだそ?」

 

 あれから約20年。俺の後ろにいた女の霊は消え、俺の霊感は失われた。その代わりなのか、今現在、俺はストーカーされている。幽霊から生身の女に変わりはしたが、俺の日常は未だに非日常のままだ。

 

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